好きなことを仕事に!会計士×飲食業 事業会社で活躍できる会計士の強みと仕事術

好きなことを仕事に!会計士×飲食業 事業会社で活躍できる会計士の強みと仕事術

株式会社ホットランド 髙橋謙輔氏(公認会計士)

30代で東証一部上場企業のCFOになった髙橋謙輔氏に会計士資格の取得から現在のキャリアに至るまでのお話を、監査法人で身につくスキルと、事業会社で身につくスキルも交えて伺いました。事業会社に転職して活躍するためのポイント、事業会社で活かせる会計士の強みについても率直に語って頂きました。

ホットランド社転職迄のキャリアの軌跡と裏舞台
―髙橋さんが、会計士を目指された理由から教えてください。
会計士を目指したきっかけは、大学時代に「自分には語学ができるわけでもPCが得意なわけでもないので何も強みがない」という危機感からでした。
そこで、何か強みを持たないといけないという危機感から、商学部であったことから経済学、経営学、商業学、会計学といった専門科目の授業の中から選ぼうと思いましたが、これといって強い興味のある分野もありませんでした。その中で、会計学が客観的な数値を扱うという点で汎用性が高いと思い、響きもいい公認会計士という国家資格の獲得を目指しました。
勉強を始めた当初は、2次試験合格後、監査法人に就職することがメインキャリアだとは知りませんでした(笑)

―2次試験合格後、監査法人トーマツに入社した理由は何でしょうか?
選考の過程でお会いする方々の印象が良かったことはもちろんですが、面接後の帰宅途中に同社より合格の連絡を頂きました。
その速さに驚きご縁も感じたので、ぜひこの会社で働きたいと思い電話で即決しました。

―監査法人トーマツでのご経験を教えてください。
国内の大手企業から中堅企業の監査を担当していました。
様々な企業を担当させて頂きながら、大手企業の監査より、中堅企業の監査現場で裁量を持ちながら業務に取り組むことにやりがいを感じていました。
入所5年目から上場企業の現場主任も経験させて頂けるなど、チャンスを与えていただいた当時の職場環境には恵まれていたと思います。

―ホットランド社との出会いを教えてください
当時ホットランドに出資していた投資会社から出向していた元監査法人トーマツの先輩(現・株式会社RettyのCFO土谷祐三郎氏)から、「上場を視野に入れた場合、財務経理を中心とした管理体制を抜本的に強化していく必要があり、それを一緒にやり抜くために参画してほしい」というお誘いがきっかけでした。
私も自分の性格上、人の顔色を伺いながら生きていくタイプではないことから、大手監査法人で一生を終えるのは苦しいと思い始めていたことから、別キャリアの検討をしていました。
そのタイミングで、自分の個人的に興味の強い「食」であり、さらに「たこ焼きのリーディングカンパニー」かつ「IPO準備」というこれ以上にない条件のそろっている会社と思い、ホットランドへの入社意思を固めました。

―監査法人での退職協議はご苦労されたのではないでしょうか?
3月決算の事業年度末監査のスケジュールがすでに決まってから、自分が退職届を提出したため、いろんな方に手間や労力はかけてしまったと思いますが、約6000人の会計士がいる監査法人にたった一人の会計専門家がいなくなるという状況は、大きな問題はないと思っていました。
ただ、退職する際には応援していただいて休暇などの調整までしていただいた当時の上席のパートナー等の方々には本当に感謝しています。

―監査のお仕事をされながら、『将来は事業会社のCFO』というキャリア目標はあったのでしょうか?
事業会社のCFOポジションは、当時の私にとっては雲の上の存在で、全く考えていませんでした(笑)
入社時においては、上場までの経理財務部門の体制整備という役割で、役職や肩書は特に聞いていませんでしたので、ましてや将来的にCFOになるということをイメージしていたわけではありませんでした。
当時、大学卒業後に監査しか経験したことがない自分に事業会社に転職して、本当に活躍できるのかどうかの不安なぐらいでした。

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会計士が事業会社で活躍するためには?         
―監査法人と事業会社では環境が異なることも多いかと思いますが、入社後から上場前・上場後はどのようなご苦労がありましたか?
マザーズ上場までは、「上場」という大きな目標に対してやるべきことが決まっていたので大変でしたが、自分で動く分には苦ではありませんでした。
やはり一番苦労したのは決算早期化です。私が入社した際には、財務会計と管理会計の数値が言えないくらいの金額でズレており、月次決算も翌20日になっても概算でしか締まっておらず、さらに毎月前月の数値が変更されるような状況でした。年度決算に関しては会社法期日ギリギリにまで時間がかかっていました。
そこで、入社後に新しい会計システムの導入を進めましたが、細かいイレギュラー対応の処理が多く、ルールもないためシステム化できない要点がどんどん事後的に発覚し、仕様変更が繰り返され、完全な本稼働には上場申請期までかかりました。
さらに、多店舗展開ビジネスであることから、決算早期化は自分1人や財務経理メンバーだけ完璧にすれば達成できるというわけではなく、色んなメンバーの協力や負担が必要でした。当社のメンバーは、きっちりとした管理体制を整えるのが苦手な方が多いですが、マネジメント層のメンバーは非常に協力的であったので、大きく助けられたと思っています。
上場後に苦労したことは、コミットした業績に対する緊張感だと思っています。その他、人前で話す緊張感はなかなか慣れませんね(笑)

―入社後CFOに評価・抜擢されたポイントは何だと思いますか?
正直、運が大きいと思っています。
CFOになった一番の理由は、上場するタイミングで財務の専門的知見があるのが私しかいなかったというのが大きいと思っています。
他には、私が「食」に詳しいというのもあるかもしれませんね(笑)

会計士のキャリアとして、その環境で唯一無二の存在として必要とされているかどうかはとても重要なポイントだと思います。

―CFOに就任されて視点が変わったところはありますか?
入社した時から、自分が正しいと思うこと、やるべきことをひたすらやっているだけですので、CFOになったことで、視点が変わったことは特段ないかもしれません。
ただ、取締役になってからは、よりフランチャイズのオーナー様や現場の社員とかかわらせていただく機会が増えたため、自然と店舗の環境や業務を意識した物事を構築できるようになったと思います。
あとは、色々理想を求めすぎないようになりました(笑)

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CFOの仕事術                     
―多忙な日々だと思いますが、仕事で心がけているポイントはありますか?
『自分の発言に責任を持って仕事を最後までやりきる』ことですね。
途中で誰かに振って途中で投げ出して終わってしまうことがないようにと考えています。
頭の中だけで論理的に物事をまとめて最適解を出すことのできる人は、世に多くいますが、それを色んな人に理解を得て、人の人生まで巻き込んで遂行していくやり切る人は意外に少ないと思って言います。そのため、仕事を最後まできっちりやりきることを日々心がけています。

他には、TODOリストを頭の中に残したままでいることが嫌で、人からボールを投げられた状態で居るのが嫌な性格です。
この点、期日を確実に守らないといけない監査法人での仕事の経験が生かされている気がします。

また、ホットランドに入社して大変勉強になったことですが、『職位が上がったからこそ、モニタリングやマネジメントだけに専念するだけではなくて、自分自身で実務もやる』ということを意識しています。
どうしても管理部門職は、エネルギーや勢いがないと声の大きさで他部署から負ける傾向にありますので、自分自身で動かないと物事が進まない場合が多いので、そういた場合は自分から動いて事が進むようにしています。

―どうやって他の人を巻き込み、変化させてきたのでしょうか?
嫌われる覚悟と、実際に手を動かして協力するといったところと思います。
先ほどもお応えしましたが、論理的に物事まとめて最適解を出すだけなら外注屋さんでよくて社内のリソースを使う必要なないですからね。
また、私は「食」に興味があり、会計以外でもプロパーのメンバーと趣味嗜好が合うネタがあったのも良かったと思っています。
あとは、自ら動き、理念・ビジョンを共感できる人を見極めてベクトルを合わせて仕事を進めていきました。


会計士の強みとは?                  
―監査法人時代も振り返りながら、監査法人で身につくスキル、また逆に身につかないスキルはどのようにお考えでしょうか?
監査法人で働いている会計士の方々は、必ず法定期限という期日をもった仕事をやっていますので、「やりきる」というのを自然にできる人たちと思っています。外に出ると法定期限のような強い期日のある仕事はそれほどないのかなと思っていまして、それがいい経験になって、強みになると感じています。
今日はしんどいので決算短信や有価証券報告書の提出をのばしますとか言えないですよね(笑)

身につき辛いスキルでいうと、
監査法人では、既定のマニュアルに準拠することと、他社例に則ることの重要性が高いというおかしな文化がなぜか存在しますので、創造性といった能力は身につき辛いのかなと思います。
ビジネスの世界では他社例がないことを考えないと儲からないので、ここが大きく違いますね。

―今後のキャリアについて考えている会計士の方々にむけて何かアドバイスをください。
『自分の能力にあった場所で働くことが一番大事』という点です。自分の専門家としての能力は、自分として価値があるという部分を伸ばせばいいと思いますので、自分が必要と思う部分を伸ばして、それに対して達成したときに満足を得ていけばいいと思います。
周りからの評価は、その能力を必要とされている環境に身を置けばいいだけの話なので、今の環境で物足りなさを感じている人は、自分の能力がないと思うのではなく環境を変えて前だけを向けば自ずと将来への道が開けると思っています。

―高橋さんはどのようにネットワークを作られていたのですか?
私は、監査法人時代にはそれほど社外の方とコミュニケーションはとってはいませんでした。
私はたまたま運よく、ホットランド社と巡りあえて結果的に良かったのですが、今キャリアを考えている方々は、色々な人とのコミュニケーションを大事にしてお付き合いを広げておけば、色々な成長の可能性があると思います。

―特に事業会社で働きたいと考えている会計士の方にアドバイスをお願いします
その業界や事業に興味が持てるのかという点が大事だと思います。
私の場合は「食」に興味があったのでホットランドに入社した後、共通の話題を通して社内の人たちとコミュニケーションを取れました。
管理部門の仕事は社内で働く他部署の方たちを巻き込んでいく仕事ですので、「外から来た会計屋さん」という認識から変えていくべきです。
なので、私はアパレル業界には絶対行けないと思います(笑)
―率直なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

interview05_profile.pngProfile
2004年 慶応大学商学部卒業
2005年 有限責任監査法人トーマツ
2012年 株式会社ホットランド 
取締役 経営管理本部本部長(現任)

趣味:
料理・ゴルフ・散歩 
休日の過ごし方:
料理(得意料理はパスタ)・散歩・ゴルフ