公開引受部は私の"天職" 会計士との相性バツグン!!

公開引受部は私の"天職" 会計士との相性バツグン!!

株式会社SBI証券 岩﨑啓昭氏

現在、株式会社SBI証券の公開引受部にてご活躍されている岩崎啓昭氏にお話を伺いました。
新卒で出版社に入社した後、有限責任あずさ監査法人を経て"天職"と思える現職にたどり着いた。果たしてどのような背景があって現職にたどり着いたのか。
監査法人時代どのようなことに迷いや不安を抱えていたのか、当時どのような思いで意思決定をして現在のキャリアを選択してきたのか、仕事に取り組む姿勢や考え方などについてもアドバイスを頂きました。

数字に疎かった私が会計士を目指したきっかけ
私は新卒で出版社に入社しました。私の仕事は本が出版されるまでの進捗管理で納期を守ることが最大のミッションでした。本の出版までにはたくさんの工程があり、社内の校正部、編集部、制作部、営業部、社外の印刷会社や製本会社、箔押しの会社等色々な人が関わりひとつひとつ期限を決めて進めていきます。同時に20~30冊程担当するので、休みの日でもいろんな案件の納期が頭をよぎっていました(笑)
トラブルはつきもので、見本どおりに仕上がらなかった印刷製本のミスや、本が出来てもサイズが合わずにケースに入らなかったり、仕上がった本を配送する際にフォークリフトで傷つけてしまい印刷からやり直しということもありました。当時、私は納期を守ることが至上命題だと考えていましたので、そんな時はどんなにお金がかかってもとにかく納期に間に合うように採算度外視で仕事を発注していました。それを見ていた上司に、「原価計算の勉強をしてこい」と言われて、社会人3年目に放り込まれたのが営業経理の部署でした。

当時、数字にはあまり興味がなかったのと、全く知識がなかったので、とりあえず簿記の勉強を始めました。2か月後に3級と2級を受験して運よく両方合格した時に、会計って面白いなと、この先も目指してみようかなと思いました。ちょうどそのころ、監査対応で公認会計士という仕事を知ることになりました。会計士の先生が会社に来て色々と質問してくることに対して、私は元帳を持ちながらしどろもどろに説明をしながら『これが会計士か』と会計士を知るきっかけとなりました。
それなりの規模がある出版社だったのですが、部長クラスでも単純な会計の仕組みがわからず困っていました。他にも会計の仕組みがわからず困っている中小企業はたくさんあるだろう、私が会計士として助けになれることがあるのではないかと思い会計士を目指しました。

大手監査法人から転職しようと思った背景
2006年に有限責任あずさ監査法人(以下あずさ)に入所し、中小企業のIPO支援をする部署に配属となりました。しかしながら入所してすぐにリーマンショックが起きたこともあり、担当した企業でIPOを果たせたのは1社のみ。その後は市場が冷え切った状況が続き、IPO支援の案件に携わる機会も少なく、上場企業の監査を担当していました。

ある時、事業部再編があり、私は商社等の大手企業を担当する部署に異動しました。大手企業では資料も整然と揃っていて、クライアントの会計知識や開示に関する能力も高く、監査手続もしっかり考えられて行われていました。一方で、このようなクライアントではクライアントでも気が付かなかったような視点で会計処理や経理作業のアドバイスをしてバリューを出していく必要があるのに対し、私はどちらかというと、まだ経験の浅い起業と一緒になって関与して行くことで、私のスキルや強みを活かせるものと感じていましたので、今後のキャリアを真剣に考えるきっかけとなりました。

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〝天職″に出会った
監査法人を出ることを視野に入れて本格的に転職活動を始めました。それまで監査法人でチェックする仕事から次は作っていく仕事をやってみようと思い事業会社を受けました。今思えば「新しく作る仕事なら事業会社」という考えも視野が狭かったかもしれません。求人情報を見て自らコンタクトを取ったり知人の紹介を受けたりして何社か面接を受けるところまでは進みましたが、私は事業会社での決算処理や開示の経験がなかったため、なかなか内定までは決まらずにモヤモヤしていました。そんなタイミングで私の元へ飛び込んできたのが、SBI証券への出向の話でした。SBI証券のIPOの実績がすごく伸びていて勢いを感じていた事と、現場と近い距離感で仕事ができる引受にニーズがあると聞いて、出向の話を受けることにしました。

引受の仕事はとても楽しいです!私の天職なんじゃないかと思っています。監査法人は第三者的な立場なのでどうしてもお客様との距離があります。証券会社は監査法人時代と比べてお客様との距離も近く、お客様と同じ方向を見て最後まで一緒にやっていけるところがとても魅力的に感じています。担当はベンチャー企業・中小企業が中心で、まだ未整備なところが多く、規程の作成や取締役会の設置から始めましょうという会社もあります。

監査法人のIPO業務との違いは守備範囲の広さです。証券会社は最初から最後まで付き合うことができるため、お客様に関わっていける範囲が全く違います。時間軸としては、引受部門が関与するのは監査法人のショートレビュー終了後、監査法人が正式に決まった段階で入ることが多いですが、目論見書が校了した後も上場日当日まで業務があります。また監査法人では会計や開示に関して深く情報を集めていくと思いますが、証券会社ではお客様にまつわる一切について情報が集まるので、監査法人時代では経験できない驚くようなことにも直面することもあります。内容としてはいいことも悪いこともありますが、監査法人時代の私よりは刺激的で、本当に楽しいと感じています。

引受はオーケストラの指揮者のような仕事
IPOってすごく関わる人が多いんです。クライアント側は社長、CFOに始まり様々な部署がありますし、証券会社側にも審査部、営業部、引受があって、もう少し言うとバックオフィスにもファイナンスに関わる仕事や機関投資家まわりのセッティングをする部署など、本当に多岐に渡ります。あとは外部の監査法人や信託、印刷会社やIPOコンサル会社だったり、たくさんの人が関わる中でIPOという一つの同じ目標に向かってそれぞれを引っ張っていかないといけない。とても大変で責任も重いですが、引受というのはそういうやりがいのあるポジションで、オーケストラに例えると、指揮者のような仕事ですね。

私自身も当初は証券会社の引受が具体的にどのような仕事をしているのかは知りませんでした。監査法人にいる時は証券会社が何をしているかとても見えにくいのですが、監査法人で得た知識が活きる場面はとても多いと感じています。会計処理はもちろんのこと、内部統制や管理業務の課題やあるべき姿をたくさん見ることができる経験と引受の仕事は、監査法人で従事する会計士ととても相性が良いと思います。
逆に全くわからなかったのは、まずファイナンスです。本を読んだり実例を見たりしながら勉強しました。あとは業種により関わってくる重要な法律関係です。監査法人時代では特に意識することが少なかった景品表示法や労働基準法関係などには苦労しました。例えば景品表示法だったら「世界ナンバーワン」という表記に対してそれは本当にナンバーワンなんですか?と確認を取ったり、ガチャやゲーム関係でも景表法違反となっていないかの確認も取ります。また36協定の遵守は絶対なので、労働基準法に基いた労務管理が行われているか、取り扱う商材によっては薬機法や健康増進法との関係など、カバーする範囲がとにかく広い。そこに知識を追い付かせるのは大変でした。

あとは状況の見極めが重要です。上場審査は基準が設けてありますが、時代によって厳しくなったり緩くなったり変動があります。合格点を取れていればよいのですが、会社の状況がどうなら合格点なのかという見極めがとても難しい。幣社の中の審査部の考え方や東証の審査部の考え方を理解した上でクライアントに分かりやすくフィードバックして合格点を取れるような指導をしていく必要があります。

簡単に上場できる会社はありません。証券会社の審査に進めることができる会社も一握り、さらに東証へ上場申請できる会社もさらに少なく、ましてや上場までたどり着くのは本当にわずかです。我々は確実に上場するためには、目の前のお客様にとって何が必要で、どのように実施すべきかを考えることが必要です。それでも突発的な事象などが起こり、このままスケジュールどおり進められるのかわからない状況も多々生じます。しかし何か問題に直面したときに、どのように解決して前にすすめるのか、それを提案するのも引受の仕事です。こうした苦難を乗り越えて無事に上場日を迎えると、東京証券取引所で社長やCFOなどお客様はもちろんのこと、他の証券会社、株主、信託銀行など様々な関係者が嬉しそうにしている姿を見て、毎回涙が出そうになります。お客様としては1回しかない上場という歴史に立ち会えて、しかもこれだけ多くの人に喜んでもらえるのを見たときに、自分の好きなことを仕事にして、しかもこんなにやりがいのある仕事はあるのかという思いを胸にしました。
弊社もまだ成長途上にあるため、同じ思いを感じることができ、共感してもらえる人を、探しています。

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IPOの引受で日本ナンバーワンを目指す
私の目標の一つはIPOの引受でSBI証券を日本ナンバーワンにすることです。今は4~5位ですが、上位を抜いて名実共に「IPOだったらSBIに任せよう」という立ち位置まで大きく成長させたい。私が入社した4年前は引受も4~5名くらいでしたが、今は11名まで増えて、案件数も倍以上になりました。組織として成長実感を得られるのはひとつの大きな魅力です。大手の監査法人だと安定はしていますが、成長を肌で感じられる感覚はなかなか得られませんでした。まだまだ発展途上ではありますが、逆に言えば変えていく余地がたくさんあります。仕組み作りについてみんなで話合い一緒に作っていく手作り感がとても好きなのでやりがいを感じています。

長期的なチャレンジで言うと、ソリューションの幅を広げたいと考えています。公開引受部が関与する前の、最低限の準備のサポートや、今はIPOコンサルの方々にお任せしていることが多い事項についても、将来的にはそこまでサポートを広げて全体作業レベルの向上を図り、もっと確度の高いIPOを目指していきたいなと考えています。

あと個人的には、IPOを目指すCFOや経営者にアドバイスをする場を設けて、今のうちからこれを準備しておいた方がいい、ファイナンスはこのタイミングでやる方がいいなど、監査法人と証券会社の観点から生の体験談を通して伝えたいと思っています。監査法人から証券会社へ進んだ私の使命かなと感じています。

監査法人時代は「将来に役立つ知識や能力を養う」時間
自分のやりたいことがわからずに悩んでいる人が多いように感じます。もっといろんな人の話を聞いて選択肢を広げた方がいいと思います。方向性が決まらずぼんやりと「今が面白くないからなんとなく外に行ってみたい」で思考を止めているのは勿体ないと思います。監査法人から外に出て活躍している人も増えていますし、いろんなキャリアパターンを見聞きして自分の道を見出してほしいです。それこそ、この「会計士UP」のようにキャリアについてのインタビューが読めるメディア、私のキャリア選択時にもほしかったなと思います。

監査法人で淡々と目の前の業務だけをやっているのは勿体無いと思います。もっと数字の裏にある背景や出来事を考えてみたり、もっと積極的にクライアントとコミュニケーションをとったりすると見え方も変わってきます。取締役会の資料や株主総会の議事録など内部資料を見てクライアントへの理解を深めたり、日々の仕事で培われる理論的に話を組み立てて文章化する能力というのは監査法人を出ても必ず役に立つと思います。たとえ監査法人で将来へのモヤモヤを抱えていたとしても、「今は将来に役立つ基礎的な知識や能力を養っている時間なんだ」と思って目の前の仕事を一生懸命にやることが大事で、その姿は必ず誰かが見て評価してくれるし、道が開けてくると思います。


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Profile
岩﨑啓昭(いわさきひろあき)
横浜市立大学卒業
出版会社勤務後、会計士試験合格。
有限責任あずさ監査法人でIPO支援や上場企業の監査を経験。現在、株式会社SBI証券 公開引受部 課長(現任)