起業家会計士が立ち上げたビジネスとは!?資格と経験の活かし方

起業家会計士が立ち上げたビジネスとは!?資格と経験の活かし方

株式会社Stayway 代表取締役CEO 佐藤淳氏

株式会社Staywayの代表取締役CEOを務める公認会計士 佐藤淳氏にお話を伺いました。会計士資格を目指した時から一貫して「起業」を見据えて行動されてきた佐藤氏。監査法人、戦略コンサルを経て、民泊とホテルを含めた宿泊施設検索比較サービス「Stayway」を立ち上げるまでで、どのように考えキャリアを選択してきたのか。キャリアの考え方、後輩会計士へのアドバイス、そして今後の展望を伺いました。

起業を見据えて会計士に
―会計士を目指したきっかけを教えてください。
私が会計士を目指した理由は2つあります。ひとつは、いずれ自分で事業をやりたいと思っていたので、会計士資格があると若いうちから色々な企業の経営者と話す機会が持てて経験が積めるのではないかと考えたこと。もうひとつは、保険として持っておくと、意思決定するときにリスクを取ることができると考えました。

―有限責任監査法人トーマツを選んだ理由はありますか?
監査法人を選ぶ際に有限責任監査法人トーマツ(以下トーマツ)を選んだのは仲の良い先輩がいたからです。悩むことなくご縁のあったところに決めました。トータルサービス部(以下TS)に所属していた先輩から「大きい会社を担当するよりも、IPOを控えているところを担当する方が色々見ることができて面白い」とアドバイスを受けてTSを志望しました。

―監査法人では主にどのようなご経験をされてきましたか?
TSでは、IPO支援を中心に法定監査、デューデリジェンスやバリュエーションといったM&A関連業務、幅広い業務を経験しました。加えて投資ファンドが投資している先の財務デューデリジェンスなどもやりました。同じ部署でもキャリアは人によって異なると思います。私は海外勤務も経験させてもらえたので、本当に幅広く経験した方だと思います。

海外勤務を経て監査法人の外へ 
―いつ頃から、どのような背景で次のキャリアをイメージされていたのでしょうか?
そろそろ監査法人を出て次のチャレンジをしようかなと考え始めたのは4年目くらいだったと思います。その時すぐ動かなかったので、5年目にシアトルでの海外勤務のチャンスが巡ってきたためでした。『駐在で外国人と働く機会もそうそうないな』と思い、海外勤務を優先しました。
シアトルでのミッションは2つ。1つは日本でやっていた監査の仕事のアメリカ版。クライアントはアメリカの会社もしくは日系の子会社でした。2つ目は新しい案件を獲得する営業活動です。シアトルに本社を置く日本人が経営している企業に営業をかける等、日本人という利点を生かして新しいクライアントを獲得することが求められました。ちなみにチームに日本人は私1人でした。
約2年間シアトルに駐在しておりましたが、"起業"という目標を考えると、監査法人に7年間は少し長く居すぎたかなと今となっては思っています。

―トーマツから株式会社YCPJapanに転職した背景を教えてください。
監査法人では海外赴任も含め色々な業務にチャレンジさせてもらいましたが、監査法人での経験だけでは専門性に寄りすぎているという自覚がありました。"起業"という目標に向けてもっと経営側の経験を積みたいと考えていた時にタイミングよく株式会社YCP Japan(以下YCP)と出会いました。YCPには大学時代の友人も何人か働いていたので話を聞く機会もあり、事業を作ることや株主として経営することについて学び、経験できそうだと思い転職を決めました。

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会計士経験が活かせないタフな新天地で得たもの
―監査法人からコンサルに転職されて率直に感じられたことを教えてください。
YCPでは専門分野という概念はなく幅広く何でもできないといけないタフな環境でした。監査法人時代は、自分の土俵である会計という専門軸で経営者と話をしていましたが、YCPでは会計という専門軸ではなく、経営軸・事業軸から話すという今までにないスキルを試されました。一緒に働くメンバーの優秀さにもかなり刺激を受けました。監査法人も優秀なメンバーは多かったのですが、YCPで出会った外資の投資銀行や戦略コンサル出身の人たちはまた一味違った優秀さで、すごくギラギラしていました(笑)
仕事にはとてもこだわりを持ちながらスピードも速い。すごくバリバリ働いて仕事が終わったら「さあ飲もうぜ!」っていうバイタリティもある人達と一緒に仕事ができたのは私にとってすごく刺激になりました。

―監査法人での経験が活きた場面はありましたか?
YCPでは会計士であることはあまり役に立ちませんでした。全く知らない分野でその分野プロ相手にアドバイスをしないといけないので、最初はとても苦労しました。
全く知らない分野を調べるにあたり、どのようにリサーチをして、リサーチした情報を組み合わせて仮説を立て、検証していくのか。当時の経験は起業した今も活きていると感じています。
業務量も多くかなりハードな日々でしたが、もともとストレス耐性のある方だったので乗り切れたと思います。監査法人でも、いきなり企業の経理部長と話しをするといった状況はよくあることでしたので、監査法人での仕事環境はYCPでも活きたのかなと思います。

―起業に踏み切った背景を教えてください。
YCPは長くいるつもりはありませんでした。2年程で会計以外の考え方や経験をある程度吸収できたなと思います。あとは年齢的に若いうちにチャレンジしたいと考えていましたので、起業に踏み切りました。起業を決断するにあたっては会計士資格の存在はやはり大きかったと思います。例え何かあっても食べるのに困ることはないと思えるし、家族も安心させられました。

激戦の旅行メディア業界に挑む
―Staywayのサイトを拝見しました。なぜこのビジネスをやろうと思ったのでしょうか?
Staywayのビジネスをやろうと思った理由は3つあります。
1つは、自分自身が旅行好きということ。国内旅行も海外旅行もよく大好きで、起業するのであれば興味関心が高く、好きな領域でやりたいと思っていました。直近、アメリカで見たコミュニティ型の宿泊施設やバケーションレンタルの波が必ず日本にも来ると思っていました。
2つ目に「旅行」は既存の市場も大きく、更に成長している点です。オンライン旅行の市場規模で3.8兆円、年率15%で成長しています。更にインバウンド旅行者は、2017年の2,869万人から2020年には4000万人へ。競争は激しい領域ですがアップサイドがあると判断しました。
3つ目はStaywayのビジネスモデルを色々な方に相談して『これならいける!』と確信が持てたことです。特に創業前の段階で、元Expedia 日本代表の三島健さん(現Staywayアドバイザー)に太鼓判を押していただけたことは本当に大きかった。色々なツテを駆使し、出会うことができました。

―その「Stayway」のビジネスモデルを改めておしえてください。
「Stayway」はホテルや民泊などの あらゆる宿泊施設の検索比較サービスです。ビジネスモデルとしてはインスタグラム等、日常化している個人の発信を活用しBooking.com、Expedia、Agoda、Ctrip、HomeAway、楽天トラベル、一休、Hotels.comなど国内・海外の大手予約サイトに送客していくというモデルです。公にはしていませんが、既に月間数十万のMAUになっています。
僕らは、自分たちのサービスを「第3世代の旅行予約サイト」と呼んでいます。

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旅行メディアは時代の流れによって変化しています。昔は「るるぶ」に代表されるような紙媒体ですよね。徐々にオンライン化し、キュレーションメディアが台頭しました。SEOで上位に出てくるけど真偽が怪しいという情報も増えました。
Staywayではその土地に住む方やその土地を訪れた方が実名で信用度の高い情報を発信します。発信している方のプロフィールもしっかりと出しています。海外の情報であれば、現地の方に日本人旅行者にとってどんな面白いことがあるのかを書いてもらいますし、国内でも東京から取材に行くのではなく、現地の人に書いてもらうようにしています。地元ならではのニッチな情報は、「ベタじゃない何かがしたい」という志向にとてもフィットしています。
旅行はインフルエンサー的な方に限られるわけではなく、誰でも行くので発信者がとても多いんです。同時に、個人の"良い情報を出している"という承認欲求も満たしていきます。
今後は、「個人」のトラベラーを活用したC to Cサービスも計画しています。

―2018年1月にサービスがローンチされたばかりですが、今後の目標をお聞かせください。
あくまで通過点ではありますが、より多くの方にこのサービスを知って利用して頂くためにも、まずはIPOを目指しています。旅行サイトは数が多く差別化が難しい領域ですが、個人の"情報を出したい"というニーズを旅行者の予約動線に組み込むというのは新しい試みです。更なるシステム開発はもちろんですが、来年にはサイトの認知度を向上させるためのプロモーションにも力をいれていきたいと思っています。
長期的に目指している世界観としては「Stayway」を入り口に宿泊から航空券などの予約が全て完結する姿です。2020年中には宿泊施設のプロデュースも手掛けたいと考えています。旅行のあらゆるシーンで我々のブランドを露出していくのが理想です。

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目標に向けて時間を無駄にしない
―これまでのキャリアを振り返り、どのような事に影響をうけていると思いますか?
これまでのキャリアに大きく影響しているのは、やはり人との出会いだと思います。起業した今、投資家を紹介してもらったり事業会社の役員になった元同僚から投資を受けたり、監査法人やYCPで培った人脈がとても大きな影響を与えてくれていると思います。

―監査法人で働く若手会計士に向けてアドバイスはありますか?
監査法人にいる間は会計士の仕事を一生懸命やって、『こいつはできるぞ』っていう評価・印象を残してほしいと思います。監査法人での仕事の評価や信頼関係は外に出てからも大きく関わってくると思います。仲が良い悪いは別として、仕事が"できた""できなかった"という印象は重要です。客観的に考えると当然だと思いますが、誰もが『仕事ができる』という印象の方に仕事をお願いしたい、任せたいと思いますよね。

―実際に後輩の会計士からキャリアについて相談されることはありますか?
ありますよ!監査法人にいる後輩から相談を受けたときは、ほとんどの場合「早く辞めた方がいいよ」とアドバイスしています(笑)
『ベンチャーでやってみたい!将来起業したい!』という思いがある人には特にそうですね。迷っている時間がもったいない。
独立して会計事務所を作りたいという人は、監査法人内である程度人脈を作ってから出ることを勧める場合もありますが、事務所を作るにしても5年を超えてくると、得られる経験としては大きくは変わらないとおもっています。監査法人経験3年でベンチャー企業のCFOを務めている会計士もいますし、やりたいことがあるなら早いうちに目標に向けて行動することを大事にしてほしいと思います。

―最後に一言お願いします。
採用になってしまうのですが(笑)、Staywayで一緒に働く仲間を募集しています。
エンジニアがメインになってしまうのですが、まずは会社に遊びに来てもらって、ビジョンを共有したいですね!

(編集部 後記)
Staywayは、2019年1月30日付で、株式会社エボラブルアジア、元マネーフォワード取締役浅野千尋氏、株式会社VOYAGE VENTURESを引受先とした資金調達について、プレスリリースを発表しています(金額未公表)



satojun_prof.pngProfile
佐藤淳(さとうじゅん)
奈良県出身。東京大学経済学部卒業
有限責任監査法人トーマツ、株式会社YCP Japanを経て、
2017年7月株式会社Staywayを設立。
運営サイト:
Stayway(ステイウェイ)
Stayway media (ステイウェイメディア)