会計士は最強のセーフティネットー20代でスタートアップ企業へチャレンジした若手会計士のキャリアの考え方とは―

会計士は最強のセーフティネットー20代でスタートアップ企業へチャレンジした若手会計士のキャリアの考え方とは―

株式会社クラス 管理部 執行役員兼管理部長 中島 悠太氏(公認会計士)

2016年に有限責任監査法人トーマツ(以下トーマツ)に入所。
その後、2018年4月に創業した家具・家電のサブスクリプションサービスCLAS(クラス)を
運営するスタートアップの株式会社クラスにジョイン。
「"暮らす"を自由に、軽やかに」というビジョンを掲げる同社にて、
執行役員兼管理部長としてご活躍中の中島氏。
20代にしてスタートアップ企業で経理・財務・法務・労務・人事と幅広くご活躍中の中島氏に、
ご自身のキャリアを軸に若手会計士の皆様にとって有益なキャリアの考え方を伺いました!

若くして活躍している中島氏の「会計士」を目指した理由                 
―会計士を目指した理由を教えてください。
私の場合、明確に会計士になりたいと思って勉強を始めたわけではなかったので、
会計士の勉強を始めた理由と会計士になりたいと思った理由が分かれています。
勉強を始めた理由としては高校生の頃、大学へ推薦で入学が決まっていたこともあり、
勉強するにしても受験勉強というよりは将来直接繋がることを勉強したいと思い、
簿記を勉強し始めたことがきっかけです。
自分に合っていたのか割と短期間で2級までとれたこともあり、会計士もいけるだろうと
安易に会計士勉強も始めました。
その後、勉強をしていく中で、実際に会計士の方々や先輩方とお話する中で、
会計士の仕事の幅に魅力を感じ、会計士いいなと思い始めていました。
ただ、正直なところ、それでも明確に会計士になりたいというよりは、何か情熱というか
熱を注げるものがあったということと、一度始めたことはやりきりたい、というところの方が強かったかもしれません。
なので、特に高尚な理由はありません(笑)。


―在学中に事業会社でインターンを経験されていますが、何か狙いはあったのですか。
合格後に監査法人で学生非常勤として勤務することもできたのですが、
大学を卒業後に監査をやることは決まっていたので、同じことを今からする必要はないかなと思い、
どちらかと言うと色んな経験をして、将来的な自分の幅を広げたいという考えが強かったですね。
そんな中で、先輩に誘われたこともあって監査をやる前に監査を受ける側を知るものいい経験だと思い、上場企業の経理のアルバイトを始めました。


―トーマツへ入所した理由を教えてください。
そうですね、決め手でいうと一緒に働くことになる人ですね。
正直、監査法人ごとにやっていることは変わらないと思っていて、やっぱり判断軸としては
仲が良い人や「この人と一緒に仕事がしたい」と思える職場がいいなと思って入所を決めました。

IMG_0925.JPG


監査法人での経験値がレベルアップに繋がっている                 
―監査法人でのやりがいを教えてください。
全てが新しい経験だったのでそれがまず楽しいなと感じていました。
新卒1年目から、クライアントの部長クラスの方と仕事ができるという経験も監査法人でしか体験できない貴重な経験でしたし、大変ではありましたけど振り返ってみると本当に楽しかったし、経験値としてすごく大きなものであると感じていますね。
人との繋がりも楽しさでしたが、やっぱり今まで勉強していたことが繋がっていると実感できる環境というのもやりがいになっていたと思います。

―監査以外の業務もご経験されていたと伺っていたのですが、具体的にどのような業務をされていましたか。
そうですね、リクルート業務も担当していました。
1年目2年目が主体のプロジェクトのリーダーとして活動をしていて、監査業務とは違い
何が必要かを自分たちで考えて、企画・実行までするということを経験できました。
監査業務でも、リクルート業務でも共通して言えることではありますが、仕事をする上での土台を作ることができたのは大きな経験でしたね。


キャリアの選択は、やりたいことからの逆算からでなくてもいい                 
―中島さんのキャリアについてのお考えを聞かせてください。
私の場合は、何か明確にやりたいことがあるからキャリアを考えるということはしていませんでした。
やりたいことがあれば、そこから逆算してキャリアを考えるということもあると思うのですが、無ければ無いで今自分がどういう状態でありたいかということをイメージすればいいのかなと思います。
私は、状態目標と言うか、いつの段階でも自由に楽しく、しがらみなくできればいいなと思っていて、結果的にそれが人のためになっている、そんな状態であればいいと考えています。
なので、最初から監査法人に残るという選択肢もあり得ますし、外に出てみるという選択肢もその時の自分の状態目標で意思決定をしているという感じですね。


―状態目標を目指す中で、転職という選択をしたきっかけは何でしょうか。
そうですね、監査法人に残る選択肢もあると申し上げたのですが、監査を2,3年やってみて細かいところでは違いはあるけれど、大きな枠でみると結局やっていることって同じかなと感じたということがまず一つ目のきっかけですね。
もう一つは、基準はあるものの必要手続きは「判断」が入るので、パートナー・主任によっても求められるものが異なることもあり、結構属人的なところもあるなと感じていました。仮に自分がその立場になるには時間がかかる。
そう考えた時に、このままでの成長曲線よりもっと角度が高いところがあるのではないかと感じて、外に目を向けるスピードが早まったのかなと思います。


―外に目を向けられている中で、実際どのように転職活動を行っていましたか。
まずは、エージェントに登録するところから始めました。
エージェントといっても会計士UPさんみたいに会計士に特化しているエージェントではなくて、コンサルとか経営とかワードベースで面白そうだなと感じていた職種に特化したエージェントです。
少し話が戻ってしまうのですが、絶対に会計士になりたいというわけでもなかったので、
自分が興味のあるところを見ていたという感じです。
後は、すごく優秀な人と一度働いてみたいという思いもありました。
優秀な人にボコボコにされたいじゃないですけど(笑)。
厳しい環境に自分を置いてみたいという考えがあり、外資のコンサルとかをよく見ていました。


―厳しい環境に身を置きたいという一つの軸の中で、クラスに入社を決めた理由を教えてください
転職活動をし始めて、最初はやっぱり外資のコンサルっていうところを目指していたのですが、内定をいただいたところは期待していたところではなくて、
そんな時、先輩がクラスを紹介してくれたんです。
正直、将来的にはあるかもとは思っていましたが、今回の転職で、ベンチャーに行こうっていうことは全く考えていませんでした。
でも、代表の久保のことはメディアで知っていましたし、スタートアップで色々な経験ができるというところがいいなと思って、HPのエントリーボタンを押していました。

―久保さんの人柄と、様々な経験が決め手となったのですね。
そうですね。本当に頭の回転が速い方だなと感じていましたし、実際に話をさせていただいて実感もしました。
話をしている中で、社会人3年程の私にでも任せてくれるということを仰っていただいたので、そこも魅力に感じましたね。

―転職して良かったと思うことを教えてください。
視野を広げられたところかなと思っています。
監査法人にいると、一緒に働く人とか付き合う人ってどうしても似たような属性の人になってしまいがちだなと思っていました。
そうなると、新しい発想とか違った視点ってどうしてもその狭いコミュニティの中でしか生まれないものになってしまうと感じていました。
外に出てみて、より広い世界で新しい発想や視点ということを感じることができて、
例えば会計士ならこんな強みがあるということは、外に出て初めて知ることのできた感覚だったなと思います。

IMG_0908.JPG


現在のミッションと今後について                 
―現在の実務とミッションを教えてください
一言で言うと、管理部門の全てですね。
最初はバックオフィスが誰もいない状態だったので、人事評価制度を作ったり財務関連の業務を全てこなしたりと幅広い業務を行っておりました。
手が足りないなと感じたところは、自ら採用も行っているので採用といった分野では、トーマツでのリクルート業務の経験が活きているところはあるかもしれませんね。
また、現在は上場準備なども実務として行っており、自分から関わる業務範囲を広げていける環境なので、やりがいを感じながら働くことができています。

―多岐にわたる業務はやはり大変ですよね。
そうですね、やはりルールや制度を運用・実行していくのは大変です。
正直今まで経験したことがない事で経験値も少ないので、課題や問題の特定に重きを置いていて、Howの部分は知見のある方の力を借りて進めているということを今も意識しています。
例えば、人事評価制度を作るとなった時に、事業を進めるにあたり、どういう人・組織にすべきか、というところを重点的に考え、細かい評価の仕方やグレードの決め方などは、経験者の方に力を借りるといったイメージです。新しいことは大変なことも多いですが、やっぱり面白いなと実感することができましたね。

―今後の目標を教えてください。
方向性として上場を目指していくという中で、より多くの人に価値のあるサービスを届けたい!という思いがすごく強いです。
上場がゴールではないので、その先のことを常に考えながら色々なアイデアを巡らせていますね。


会計士は最強のセーフティネット!やりたいことにどんどんチャレンジするべき!                 
―キャリアに対して不安や悩んでいる若手会計士の皆様へメッセージをお願いします。
これまでの話で一貫しているんですけど、個人的にはあまりキャリアっていう考えを持っていなくて。
監査法人にいると中々実感はできないかもしれませんが、会計士って手に職ではないですけど、最強のセーフティネットだと思っています。
外に出てみて違うなと感じれば、監査法人に戻ればいいし、さっき話した状態目標を明確にして、今の自分がどうなりたいのかを優先させることを考えてみるのも選択肢の幅を広げるといった意味でいいのではないかと思います。
だからこそ、不安になる必要なんかないですしもっと楽に考えてもいいよと伝えたいですね。


―今までの環境(監査法人)を捨てて新しい環境へのチャレンジに不安はなかったのですね。
そうですね。不安は特になかったです。
私の場合は、経験とか成長というところを重視しているので、いかに若いうちに負荷じゃないですけど、経験値を積めることができるのかという点を大事にしています。
なので、監査法人でしか得られない経験、監査法人だと得られやすい経験、どこでも得られる経験、つまり経験の軸と他社と監査法人という軸のマトリクスで考えた時に監査法人に残ることに興味をそそられず、外に出る選択肢を選びました。
クラスもスタートアップで、最初は家具のレンタルをするってくらいしか決まっていませんでしたが、そこにも特に不安はなかったですね。


―それは何故でしょうか。
よくVCの方が仰っていることかもしれませんが、創業初期では特に事業というよりは経営陣の方が大事というのを、直感的に感じていたのかもしれません。
これまでの経験則や尊敬できる考え方や人柄が経営陣にあったので、そこに不安は感じなかったです。
収入面でも、外に出て物足りないなと感じれば何かしら副業などでも一定稼げると思いますし。
同じことの繰り返しにはなりますが、会計士は最強のセーフティネットですし、興味があるなら飛び込んで欲しいと思いますね。
それでも飛び出さないのであれば、本当にそこに興味があるのかって疑ったほうがいいかもしれませんね。

―最後に中島さんのモチベーションの原点を教えてください。
私、ゲームが好きで、結構「人生=ゲーム」みたいに考えているところもありまして(笑)。
RPGゲームだと成長するためには、敵を倒して経験値を得ないといけない。仕事でも成長するためには、今までにやっていないことをやってたくさん経験値を貯めることが大事だと考えています。
なので、多少きついなと思っても努力して大きな経験値を得ることに力を注げているのかなと思いますね。
ベンチャーだからスタートアップだから成長できるのではなくて、成長できる環境を自分自身でどう活かして、経験値を積んで成長していくかってところが大切だと思いますし、
実際にやってみて、すごく楽しみながら成長できているなと感じています。

IMG_0920.JPG

―本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました!

Profile
IMG_0930.JPG
中島 悠太(なかじま ゆうた)
1993年生まれ 埼玉県出身
慶応義塾大学 商学部 卒業
有限責任監査法人トーマツ
株式会社クラス 管理部 執行役員兼管理部長(現任)


メニュー