上場企業役員からITベンチャーへ! ~常に新しいチャレンジを続ける、会計士のミッションとは~

上場企業役員からITベンチャーへ! ~常に新しいチャレンジを続ける、会計士のミッションとは~

akippa株式会社 取締役 小林 寛之氏

有限責任監査法人トーマツ(以下トーマツ)退所後、プライベート・エクイティ・ファンド(以下ファンド)を経て、株式会社トリドールホールディングス(以下トリドール)にて取締役を務める。2020年より会員数累計220万人、駐車場数累計4万6000か所を誇る、予約駐車場サービス・駐車場シェアサービス業界大手のIT企業、akippa株式会社(以下akippa)に入社し、取締役として"なくてはならぬ"をつくるというミッションを掲げる同社にて、経営戦略の一翼を担っている。特にwithコロナ時代に突入した現代において、なくてはならぬIT業界へのご転職をお考えの会計士の皆様にとってとても有意義なお話を聞かせていただきました。

上場企業役員からベンチャー企業へのチャレンジを決めた理由と背景                 
―まず、トリドールからakippaへご転職された背景を教えてください。
akippa代表の金谷とは色々なご縁があり、一緒にやりませんか?と声をかけて頂いたことがきっかけでした。
それと、前職のトリドールでは執行役員や取締役、常務、CFOなどを経験してきて、もう一度事業の最前線で自分の力を発揮したくなっていたタイミングでもありました。
最終的には、金谷のビジョンやakippaの展開する事業に共感し転職を決意しました。


―akippaさんのサービスはご存じでしたか?
実はトリドール在職中に法人でユーザーとして使っていてサービスは知っていました。
前職のトリドールで展開していた丸亀製麺の郊外店舗では、土日等の休日は駐車場に列ができるくらい混み合うのですが、平日には比較的余裕があるという駐車場問題がありました。
そんな時に、たまたま知り合いが1日単位でも駐車場を使えるakippaのサービスを教えてくれて、混み合う休日には従業員用として店舗近くの駐車場をユーザーとして利用していました。そこから半年くらい経った時に資金調達の話が出てきて、CVCの投資をしてから7年ほど、ユーザーであり投資先として関係がありました。

―ユーザー視点、投資家視点でakippaさんのサービスをどのように見られていたのでしょうか?
外側から見ているときは収益化までは時間がかかりそうだけど、面白いビジネスだなと思っていました。そして、その三方よしのビジネスモデルに魅力を感じていました。
駐車場を貸したい人は稼働していない場所を貸し出すことで収益がでるし、借りたいドライバーはほかの駐車場よりも安く簡単に駐車することができる。そしてakippaにも利益が出るという、関わる皆を幸せにするビジネスだと思いました。

―akippa社への入社を意思決定する過程で、他社との比較などはされたのでしょうか?
他と比較検討は全くしませんでした(笑)
転職するうえで条件も大事だと思いますが、私は『誰と働くか』というのをとても重要だと考えています。その点で、金谷の人柄や考え方を知っていたという点は意思決定するにあたって非常に大きな要因でした。


ベンチャー企業で取り組むミッションと課題                 
―現在のミッションを教えてください。
今の私のミッションは経営戦略を立案して、それを会社に落とし込むことです。
2023年までに、会員数累計1000万人、駐車場箇所数累計20万カ所を目指しています。
トリドール時代に見えていたakippaは、とにかく個の力が強くて、それが上手く回っている印象でした。今後は、この強い個を活かしながら強いチームを作り、会社全体を強くするのが私の役目だと考えていて、営業(フロントオフィス)と総務・経理など(バックオフィス)とを繋ぐ販売管理(ミドルオフィス)の底上げも重要だと感じています。

また、いずれIPOしたいという思いもあるので管理部と一緒になりながら、戦略とセットでエクイティストーリーをどう作っていくかというところにも携わっていきたいと考えています。これまでのファンドやトリドールでの経験が活きているなぁと感じています。

―現在感じている課題は何でしょうか。
もちろん課題は沢山あります(笑)
日本市場でC to Cマーケットプレイス型のビジネスをどう成功させるかというのが一番の課題と感じています。
米国発の流れとして、B to B SaaSと同様に、日本でもこのビジネスモデルは盛り上がってくるのではないかなと思っています。

今までは、過去のリクルートさんがやってきたように、営業力で法人を開拓して、情報掲載やユーザーの獲得はWebマーケティングに費用をかけて多くのユーザーを集めて、その中でマッチングを起こしてきました。
現在はテクノロジーの進化とともにマッチングがオートメーション化されてきています。
特にウーバーイーツさんは、AIを使って配達員さんと飲食店をマッチングさせています。テクノロジーが進化したからこそ、効率化が進みビジネスチャンスが広がっている、そこに大きなチャンスがあると考えているからこそ、課題でありミッションであると思いますね。


―確かにもマッチングは格段に効率化されていますし、人材業界や様々な業界で非常に可能性のある市場ですね。
人材業界なんてまさにその典型ですよね。
昔は人間がやっていたことを、今はシステムがやっている。
今までは営業力をかけている分、単価の高いビジネスしかできませんでしたが、テクノロジーが進化したことによって、単価の低いビジネスでも成り立つ世界にどんどんなっていくと思います。


―まさに、akippaでもそこでビジネスを展開していると。
そうですね。
ただ今はまだまだビジネスの拡張期で、それなりに人手をかけていかに火を起こすかというフェーズです。一度、ちゃんと着火した後は仕組みで回していくということが大事になると思っています。

―仕組み、システム作りが大切なんですね。
システムはもちろん大切ですが、akippaでは「探しやすい」「停めやすい」というユーザー目線を大切にして、チームで試行錯誤を繰り返しています。
例えば、ウェブ上で簡単に空きを探せるようにしているだけではなくて、駐車場を掲載する際にはわかりやすい写真や、道順を丁寧に説明するなど「探しやすい」「利用しやすい」工夫をしています。良い顧客体験をいかに作っていくかということが、akippaのビジネスモデルでは非常に重要であると考えています。

―ちなみにプライシングはどのようにされているのですか?
価格設定は専門のチームがあり、料金設定を弊社に委託された駐車場に関しては専門チームで価格設定をしています。需要に合わせて価格を変えるダイナミックプライシングができるので、非常に収益効率はいいんですよね。
ここが既存の時間貸し駐車場との大きな違いです。例えば東京ドームでプロ野球の試合がある日には価格を上げ、逆に試合やイベントがない時は価格を下げることもしています。特に野球の試合でいくと、ゲームのカードが違うだけで価格設定も変わってくるんですよね(笑)。
試合があるというだけでなく、首位攻防戦とか需要が高いカードとか、後は天候によっても変わってきますね。
そういったノウハウがどんどん蓄積していっていますし、コロナ禍前にはAIを使った実証実験も実施していました。


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仕事のやりがい                 
―ご入社されて、約1年。世間的にもかなり大変な時期にジョインされたと思いますが、その中でのやりがいを教えてください。
そうですね。
世の中の状況に関わらず、個人としても会社としても、どう成長していくかというのを日々考えなくてはいけません。
お金をいただいている身で大変恐縮ではあるのですが、IT業界については無知だったので、それこそKPIの見方やマーケティングのやり方、テクノロジーという意味でも知らなかったことを働きながら学べるということが一番嬉しかったです。
ただ、IT業界も飲食業界(前職のトリドール)もビジネスの本質は似ているなぁと思うことは多々ありますね。


―具体的にどのような点が似ていると感じられますか?
どちらの業界でも、新しいブランドを作るとき「儲けよう」という下心があったらダメなんですよ。

―ダメなんですね!(笑)
ダメです!ダメです(笑)。
外食でも、あるお客様がいたとして、そのお客様が毎日通ってくれるという視点で店を作っていかないといけないんですね。
それはIT業界におけるプロダクト開発でも一緒で、ある課題を抱えているユーザーの方に対してその課題を解決できるサービスっていうのをまず作ります。
例えば、自動車業界がどうだとか、AIがこうだからとか、その何パーセントくらいのマーケットシェアをとってという作り手側の発想をするとだいたい失敗するんです(笑)。

実際に新しいサービスを作る際には、例えば既存事業の営業と並行してやろうとすると難しい。目の前の業務に追われてしまうと、ユーザー目線でサービスを見ることが本当に大変なんですよね。だからこそ新たに専門の小さなチームを作って、新しいサービスを作りあげていくことが重要なんです。
小さいチームで早くトライ&エラーを繰り返すということをするのが大事で、そういった点も飲食業界とIT業界で似ているなと感じたポイントですね。
IT業界の素人ではあるのですが、ビジネスの本質といったところは似ていて、そういうのを発見しながら、戦略に落とし込んでいくことがやりがいの一つですね。

―ご回答いただきありがとうございます!徹底的なユーザー目線を貫いた上で、小さなサクセスを積み上げていくということですね。
そうです!業界を超えても正しいことは正しいんだろうなぁと思ってやっていますし、
そういう発見は日々面白いなぁと感じています。

IT業界で働く魅力とは!?                 
―「ITベンチャーにチャレンジしたい!」という若手会計士からも多くの相談を受けるのですが、小林さんの考えるIT企業の魅力を教えてください。
確かにIT寄りの企業で働いてはいますが、どちらかというと技術を作っているわけではなく、あくまで「"なくてならぬ"をつくる」というミッションと「あなたの"あいたい"をつなぐ」というビジョンで、目の前の困っている人の困りごとをどう解決するかというところなので、前職の飲食業界での食べに来てもらった人に喜んでもらいたいという点で、人の願望を叶えるといった意味ではあまり変わりはないなと感じています。

あくまで手法の一つとしてITという形があるだけで、根本はどの産業でもどの会社でも変わらないと思っています。特に、ITという観点で言うと、日々ソフトウェアなどが進化を続けていく中でできることがどんどん増えていますよね。
昔は、紙の地図を広げてみながら目的地に行っていましたし、待ち合わせも会えないなんてこともありましたしね(笑)。

それがこの20年~30年で変わっていってますし、もちろんハードウェアの進化もありますけど、ソフトウェア、アプリケーションの力で、やれることが増えていって今後もどんどん増えていくんだろうなと思っているので、人の困りごとを解決するツールとしての、ITというのはすごく魅力的だなと感じています。

そしてITは、すごく民主的だと感じています。
特にインターネットは民主的だなと思っていて、例えばニュース一つとっても今までは新聞社や特定のメディアが、大衆に流すといったところを、まさにTwitterやFacebookで個人が発信できる時代になってきています。

コインパーキングを始めようと思ったら土地を借りる、機器を設置する、それを運営するというようにお金と人と労力をすごく必要とするんですけど、akippaのサービスでは誰でも駐車場オーナーになれる。

そういった意味でも、これまではすごく資本を持っていたりとか、ネットワークをたくさんもっている人とか、一部の人たちが世界を牛耳っていたと思いますが、ITとインターネットが開かれることによって、誰にでもチャンスがある環境になったという点ではすごく面白い業界だなと感じますね。


―誰にでもチャンスがあるということは、どんどん新しいものがでてくるということで
競争も激しいですよね。

そうですね。だからいかに競争優位を作るかというところは大事です。
akippaはそこが強いなと思いますね。
テクノロジーだけだと、一夜にして新しいテクノロジーが入ると変わってしまうんですが、akippaはテクノロジーもありながら、リアルを抑えていくという点が強いんだろうなと感じています。


今後の展望                 
―今後の目標を教えてください。
まずはこのakippa事業をひとつ形にするということ。
先ほどもお伝えしましたが、財務戦略も一部担当しているので、まずは事業を伸ばすことですが、将来的にはIPOもできたらいいなと思っていますね。

―現在はCFOというよりは経営企画・戦略といったミッションがメインですか?
そうですね。戦略も見ながらファイナンスも少しといったイメージですね。
実はakippaには会計士が4名いるのですが、そのうちの一人がガバナンスとか耐性構築とか、日々の経理財務に関してしっかりと見てくれているので、役割分担もしっかりしています。
なので、私は戦略面とエクイティのフォローをどうしていくかということに集中できていますね。

―会計士の方が多くご活躍されているんですね!
そういった意味では会計士UP好みの会社と言えますよね(笑)。

―ありがとうございます(笑)。
最後に上場企業の役員やファンドなど様々なご経験をされてきた小林さんの個人的な展望を教えてください。

40代まではまだ成長し続けたいと考えています。
30代で積み上げてきたものに対して、どのようにして上積みができるかだと思っています。
そのうえで、50代になったらそれまで積み重ねてきたものを使って世の中にお返ししていきたいなという思いはありますね。
それがどういう形なのか、まだ具体的にはわからないのですがそういったことができるように今後も新しいチャレンジと成長を続けていきたいと思います。

―本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました!

Profile
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小林 寛之(こばやしひろゆき)
1978年 群馬県出身
同志社大学商学部卒業
同志社大学大学院商学研究科商学専攻博士課程(前期課程)修了
監査法人トーマツ
国内大手証券系プライベート・エクティ・ファンド
株式会社トリドールホールディングス 取締役 経営企画室長
akippa株式会社 取締役(現任)